2019年11月22日 更新

子供と一緒に秋の京都のお寺を楽しむ【金戒光明寺】

初秋の京都、金戒光明寺へ家族で行ってきました。

初秋の京都へ家族で

神社やお寺にお参りした時に、自分自身はいつから手を合わせるようになったかと、ふと考えてみました。思い返せば、実家には仏壇があり、物心がつく頃には、祖母からは月に1回くらいは、ご先祖様に手を合わせることを教えられていたような気がします。

今、自分の娘たち(9歳と5歳)の環境を考えると、少なくとも仏壇はなく、たまに行く墓参りでくらいしか、おそらく日常の中で意識的に手を合わせるということがないことに気が付きました。私自身は無宗教だし、子供たちに手を合わせることを意識させる必要があるのかという疑問もありましたが、京都観光をしたいという妻の声もあり、天気のよい初秋の空の後押しもあり、家族で京都の金戒光明寺の秋の特別公開に行ってみました。
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9歳の娘から「今日は、どこに行くの?」という質問を受け、パンフレットを見せながら、素直に「お寺」と答え、「何があるの?」と聞かれ「お庭が綺麗」と伝え、娘たちは「お城みたいやな」と二人で盛り上がっていました。とりあえず、目的地がどうあれ、休日に電車に乗って、外出することが、まだまだ楽しい時期のようです。
京都駅からバスに乗り、金戒光明寺の山門が見えてきたころに、娘たちは改めて「お城みたい」とぼそっとつぶやき、「着物じゃないけど、入ってもいいの?」という意外な質問が飛んできました。笑いながら「大丈夫」と伝えると、無邪気に石段を登りはじめ、門についている「乳(ち)」とよばれる金具に一言、「おっぱいがある」と笑いながらはしゃいでいます。子供が素直なのか、金具を命名した人の目が確かなのか、ちょっとした驚きです。
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そして、山門の脇にある入口から楼上を目指し、目の前にそびえ立つ階段を見て、アスレチックに挑戦するようなテンションで、上の子が下の子に「足はこっち」「ロープをもって」
と協力しながら登ります。やっとの思いで、楼上につくと一気に開ける景色と山門の高さに歓声をあげ、京都タワーや大きな鳥居を見つけては楽しそうにしています。文化財の価値は、当然、まだ理解できないだろうが「最初は、クレーン車とかがない時代に、昔の人が作ったんやで」と伝えると「ほー」と驚いた様子をみせていました。
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(特別に撮影許可をいただいた山門の写真・左:山門からの景色、右:山門楼上内)
そして、室内に入ると中央にある仏様を見て、下の子が「絵本の中にいた人や」と小声でつぶやいています。理解はしていないだろうが、どうも室内に入った瞬間、さっきまで騒がしかった二人は、仏様や羅漢像を見て、大きな声で騒ぐ場所ではないと察したらしく、ガイドさんの話を座って聞いている他の人たちを見て、聞き耳を立てています。ガイドさんの話を聞こうか聞かまいか、娘たちがまよっている間に、檀家さんを連れて、お坊さんが入ってこられました。お坊さんのお話が始まると、子供たちも檀家さんと並んで座り、一緒にお話を聞き、天井の蟠龍図の解説になったときに、初めて天井の絵に気が付き、驚いた様子で、山門を火災から守るためにという説明に、理解しているのか、していないのかフムフムと頷いていました。そして、周りの檀家さんが、手を合わせている様子を見て、自然とその姿を真似て、恥ずかしそうに手を合わせてうつむいていました。

御影堂(大殿)の中に入ってからも、感覚的に神聖な場所だと理解をしている様子で、終始、小声で質問をしてきます。こちらも詳しいことは答えることはできないですが、先ほどの山門の蟠龍図へ込められた思いを引き合いに、たくさんの人がそれぞれの思いをもって、ここにきては手を合わせているんだというと、9歳の娘は妙に納得した様子で中央の法然上人の御影に向かって手を合わせていました。

ここで、娘たちが没頭したものがありました。写経です。南無阿弥陀佛と薄く印字された紙を筆ペンでなぞり、日付と祈願と名前を書くものです。「パパのおばあちゃんとかが、亡くなった後も幸せでいられるように、仏様にお願いするんやで」と伝えると、「やってみたい」と筆を手にしました。9歳の娘は書道を習っていることもあり、集中して難しい漢字を真剣になぞり、5歳の娘は、まだ、姉の姿を真似ているだけでしょうが、その集中力が伝わってくるような真剣な顔つきでした。その紙を持って帰りたいという娘たちを言い聞かせて、お供えし、浄財を入れて、鐘を鳴らし、家族で一緒に手を合わせました。

すっかり、手を合わせることに慣れた娘たちは、仏様の前に来るたびに、しっかりとキメポーズのように、手を合わせながら少しずつお寺の空気感を実感している様子でした。ただ、お庭に出た時には、おそらく仏様ではないと思われるカエルの石の置物にも、ここでも、しっかりと手を合わせていました。
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授与所では、カラフルな色に惹かれて、お守りを欲しがり、最後は、アフロヘアのような頭髪の五劫思惟阿弥陀如来のお姿とその云はれを聞きながら「そろそろ、美容院にいかないと」と少し大人びたコメントを母親と楽しんでいました。

娘たちは、手を合わすことも、写経も、きっとその本質は理解ができていないと思います。
しかし、時代とともに価値観も変わり、身の回りの環境は否応なしに変化する日常で、親として子供に何を伝えるべきなのかを考えるより、シンプルに京都に行ってみるのもいいかもしれないと思いました。少し早い紅葉を見に訪れたお寺は、娘たちにとって、日常にはない緩やかな緊張感を体感できる新鮮な場であり、もしかしたら、昔から受け継がれているものの大切さや、過去の積み重ねの上に今があるということに、少しは感謝と理解をする機会だったのかもしれません。

(文:京都市観光協会〔DMO KYOTO〕職員)

基本情報

名称:金戒光明寺
住所:京都市左京区黒谷町121
アクセス:京都市バス「岡崎神社前」下車徒歩約5分、「東天王町」下車徒歩約15分、「岡崎道」下車徒歩約10分
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