2019年11月12日 更新

心癒される優美な襖絵とお人形 <宝鏡寺 秋の人形展>

人形の寺とも呼ばれ、皇女が入寺する尼門跡寺院であった宝鏡寺。通常は一般公開されていませんが、例年春と秋に皇室ゆかりの人形を展示する人形展が行われます。また、優美な襖絵に彩られる本堂内部や、皇女和宮ゆかりの鶴亀の庭、イロハモミジの紅葉が美しい本堂前庭といった庭園も必見です! 開催期間は2019年11月1日(金)~30日(土)です。

人形の寺・宝鏡寺

 (169197)

宝鏡寺があるのは御所から北西へ、直線距離にして約1キロの場所。
寺之内通に面する宝鏡寺の門をくぐると、玄関の右側には人形の寺ならではともいえる、人形塚があります。この人形塚は昭和34(1959)年に建立されたもので、台座は武者小路実篤の歌碑となっています。
この人形塚の背後には京都屈指の名木として知られるイロハモミジの大木があり、春から初夏は新緑、秋は紅葉、冬はその見事な枝振りで、四季折々に人形塚の背後を彩っています。また、例年10月14日にはこの人形塚を中心に人形供養も行われます。
 (169198)

こちらは唐破風屋根を持つ宝鏡寺の玄関。拝観はここから靴を脱いで堂内へと入っていきます。宝鏡寺は光厳天皇の皇女 華林宮恵厳禅尼を開山とし応安年間創建されました。天明の大火で大きな被害を受けましたが、その後 書院、本堂、使者の間、玄関、阿弥陀堂、大門が復興され、京都市指定有形文化財に指定されています。

令和元年!秋の人形展

 (169201)

玄関を入り進んで行くと「使者の間」があり、この秋の特別公開期間中のみの展示となる豪華な「五節の舞」の人形が出迎えてくれます。「五節の舞」は新嘗祭や大嘗祭で舞われるもので、新しい天皇が即位後に一度だけ行う大嘗祭では五人の舞姫によって舞われます。
令和元年は新しい天皇が即位されました。しかも存命中に天皇が位を譲られたのは江戸時代以来およそ200年ぶりのこと。宝鏡寺の拝観ではそこかしこでお祝いのムードを感じることができます。
 (169203)

多くの人形を所有する宝鏡寺では、春と秋の人形展で毎回選りすぐりの人形達が展示されます。
「孝明さん」と呼ばれるこちらのお人形は第121代孝明天皇崩御の後、形見分けとして宝鏡寺へ下賜されました。「孝明さん」はいわゆる御所人形とよばれる三頭身のふっくらとした体型が特徴の愛らしいお人形。
宝鏡寺は多くの皇女が入寺されたことから多数の人形が御所から贈られ、人形寺と呼ばれるまでになりました。
 (169206)

少々貫禄が漂うこちらのお人形は「万勢伊さん」といって、季節の衣装に守り刀、お道具箱にかるた、「おたけさん」に「おとらさん」というおつきのお人形までいて、三体並んだ姿は時代劇で賑やかにお茶でも飲んでいそうな雰囲気です。さらにこの「万勢伊さん」、這い這い人形と呼ばれる小さなお人形まで所持。屏風の文字などぜひ細部までご注目を!
 (169209)

本堂東側の一室では宴飲の礼として壷に矢を投げ入れる「投壷(とうこ)」に興じる人形達が展示されています。こちらの部屋のお人形たちも、新しい時代を迎えたためか、なんだか嬉しそうな、あるいは楽しそうな雰囲気が漂っているようです。
 (169213)

2019年秋の人形展では、過去の人形展のポスターやリーフレットも展示されています。レトロなポスターは今見てもお洒落なものばかり。

ため息ものの美しさ!宝鏡寺の障壁画

 (169216)

宝鏡寺は歴代何人もの皇女を迎えただけあり、本堂を彩る数々の障壁画がとりわけ優美なお寺としても知られています。
2004年に現代の日本画家・河股幸和氏により描かれた24面の襖絵も素晴らしいと評判で、こちらはその1つ・秋の図「葡萄と鹿」。古来よりめでたい植物とされる葡萄の葉と実が美しく配され、愛らしい鹿の表情は見ているこちらの気持ちまで優しくしてくれるかの様です。
 (169218)

「葡萄と鹿」の襖絵は数々のお人形とともに鑑賞することができます。お人形の展示ケースに写る鹿と目が合えば、思わずクスッとなってしまうかも。ガラスに写り込む鹿たちも、美しい庭の光景も、いっしょに楽しんでしまいましょう。
 (169220)

ご本尊の聖観世音菩薩像が安置されている内陣との境は江戸時代の絵師・狩野探幽の作とされる優美な菊の花が描かれた襖絵に彩られています。こちらもため息ものの美しさ!

初秋の境内風景

 (169223)

宝鏡寺の阿弥陀堂(画像左側)には第119代光格天皇の勅作によるご本尊阿弥陀如来立像と、法体の日野富子の木像も安置されています。
室町幕府8代将軍足利義政の正室・日野富子は宝鏡寺にゆかりのある女性。明治初期まで宝鏡寺に隣接してあった大慈院は日野富子が出家して入寺した寺で、現在大慈院の歴史と法灯は宝鏡寺に受け継がれています。
宝鏡寺には桜や梅の木もあり紅葉が早いこれらの木々は、モミジよりも一足早く秋の紅葉を迎えます。
 (169225)

こちらは11月1日の本堂前庭の様子。人形塚の背後を彩るイロハモミジの木はほんのわずかに色付いた程度ですが、それでもお庭の主役です。この名木は緑の時期も本当に美しく、色付きはじめの頃など比較的参拝者が少ない11月上旬や中旬に訪れてゆっくり鑑賞するのもオススメです。

しみじみ美しい紅葉の庭園風景(以降の画像は2018年以前のものです)

 (169228)

本堂前庭のイロハモミジはそれぞれおよそ、高さ約8.7m、枝張約16m、幹周約1.5mもある見事なもので、上京区民の誇りの木に選ばれています。
 (169230)

秋の紅葉と京都の寺社はやはりしみじみとした美しさが味わえます。
 (169232)

こちらは皇女和宮 親子内親王が幼い頃に遊んだという鶴亀の庭。この庭を見ていると、公武合体の為遠く江戸まで嫁した和宮の胸の内に思いを馳せずにはいられません。はたまた御所や町中にあまりにも近いこの地で過ごした姫宮たちは、いったいどのように世の中を見つめていたことでしょうか。
 (169234)

宝鏡寺西部の堀川通は銀杏並木が美しく、秋に堀川通の市バス停留所を利用する際は、銀杏の黄葉も目にすることができます。
人形の寺として知られる宝鏡寺の周辺は表千家、裏千家に関連する史跡や施設が多数点在し、茶道とは縁の深い場所。茶道具を扱う店舗も多数あるほか、俵屋吉富、鶴屋吉信、田丸弥といった名だたる老舗の和菓子店も点在。宝鏡寺は可愛く優美なものに溢れるだけで無く、その周囲も魅力的とあって、特に女性たちにとっては興味が尽きない場所と言えるでしょう。

※堂内等特別に許可を得て撮影させて頂いています。

基本情報

宝鏡寺 <秋の人形展>
住所:京都市上京区 堀川東入百々町547
開催期間:2019年11月1日(金)~30日(土)
時間:10:00~16:00(15:30受付終了)
料金:大人600円
アクセス:
・京都駅から市バス9系統で「堀川寺ノ内」下車徒歩約2分
・京都駅から地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、②番出口から徒歩約10分又は「鞍馬口」駅下車、①番出口から徒歩約15分
・京阪電車「祇園四条」駅から市バス12系統「堀川寺ノ内」下車徒歩約2分
・阪急電車「烏丸」駅から市バス12系統「堀川寺ノ内」下車徒歩約2分
お問い合わせ:京都市観光協会 075-213-1717(10:00~18:00)
26 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

【京都】秋の特別公開「金戒光明寺」夜間拝観も開催!

【京都】秋の特別公開「金戒光明寺」夜間拝観も開催!

浄土宗最初の寺院として知られ、幕末は京都守護職の本陣となり松平容保や会津兵が滞在したことでも知られる金戒光明寺。2019年秋は特別公開として11月4日(月・休)~12月8日(日)の期間、御影堂・大方丈・庭園と、山門の楼上内部が期間限定で特別公開されます。 また、同期間で金戒光明寺夜間拝観(ライトアップ)も開催。幻想的な夜の光景を見ることもできます(山門の夜間拝観はありません)。
2019年京都秋の特別公開!霊鑑寺&ノートルダム中学高等学校「和中庵」

2019年京都秋の特別公開!霊鑑寺&ノートルダム中学高等学校「和中庵」

五山の送り火で有名な大文字山の麓、そして哲学の道からも程近い場所に「霊鑑寺」と「和中庵」はあります。それぞれ通常は一般公開されていませんが、霊鑑寺は2019年11月16日(土)~12月1日(日)、和中庵は2019年11月22日(金)~12月1日(日)に特別公開が行われます。霊鑑寺と和中庵は徒歩約2分といった近さですので、併せて訪れるのがオススメです!
【京都紅葉特集】人形の寺と親しまれる「宝鏡寺」で人形展と紅葉を楽しむ

【京都紅葉特集】人形の寺と親しまれる「宝鏡寺」で人形展と紅葉を楽しむ

人形の寺と親しまれる「宝鏡寺」では、秋の特別公開 人形展が行われます。公開期間は11月1日(木)~30日(金)、普段非公開の「宝鏡寺」で人形展と紅葉を楽しんでください。
【京都新緑スポット】超穴場!とんち名人一休禅師ゆかりのお寺!!睡蓮も咲き誇る「一休寺(酬恩庵)」

【京都新緑スポット】超穴場!とんち名人一休禅師ゆかりのお寺!!睡蓮も咲き誇る「一休寺(酬恩庵)」

紅葉の名所は新緑の名所でもあり。以前紅葉観光で訪れ、その素晴らしさと穴場感が気に入り、今回は青もみじ目的で。それ以外でも池の睡蓮や庭の苔も見頃。京田辺市という郊外でありながら、わざわざ参拝したいお寺。
【紅葉リポート2023】「光る君へ」ゆかりの地☆『蘆山寺』~「源氏物語」が誕生した聖地~

【紅葉リポート2023】「光る君へ」ゆかりの地☆『蘆山寺』~「源氏物語」が誕生した聖地~

2024年の大河ドラマは「源氏物語」の作者・紫式部が主人公の「光る君へ」に決まりました。そんな紫式部の邸宅があった場所で「源氏物語執筆地」として有名な「蘆山寺」へ、今の紅葉の様子を伺ってきました。
柳町イズル | 1,046 view

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

公益社団法人 京都市観光協会 公益社団法人 京都市観光協会