2019年4月27日 更新

【聖地巡礼】文豪、谷崎潤一郎の「細雪」でマキオカ姉妹が愛した京都の桜スポットを行く《前編》

文豪・谷崎潤一郎の長編小説「細雪」は、大阪の旧家を舞台に四姉妹の生活を綴った長編小説で、谷崎潤一郎の代表作とも言われています。「細雪」では京都への花見のシーンが美しく綴られており、読む者を惹きつけます。 今回、筆ペン画家・最先端星人が「細雪」の京都のお花見エリアを聖地巡礼してきました。 いつもより長い記事ではありますが、最後までお付き合いのほどお願いします。

谷崎潤一郎の小説【細雪】と京都の桜

谷崎潤一郎といえば「痴人の愛」や「刺青」「春琴抄」など数多くの傑作を遺した、日本を代表する小説家の一人。

長編小説「細雪」も代表作の一つで、大阪の旧家・牧岡家の四姉妹の悲喜こもごもな生活を描き、三女・雪子(きあんちゃん)のお見合い話を主軸に物語は流れる。

通常、小説を読まない昭和天皇が最後まで読了したと言われている作品でもある。
海外でも谷崎作品は評価が高く、「細雪」は「ザ・マキオカ・シスターズ」という、美しい日本語題名を無視した英題で人気だ。
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「細雪」の中で印象的なシーンの一つに、京都でのお花見が上げられると思う。

物語の中でマキオカ姉妹は、桜の季節が来るのを毎年楽しみにしており、必ず京都の桜を見に行っている。
京都へ花見に訪れるシーンが綴られているが、読んでいるとその美しい情景が目に浮かび、まるで自分も一緒に花見をしているような気分になる。

今回、筆ペン画家・最先端星人が、4月上旬の桜の季節にマキオカ姉妹が訪れた京都を、物語と同じ流れで歩いてきました。

広沢池から始まり、大沢池、大覚寺、清凉寺、法輪寺、竹林の小径などを経て、平安神宮の神苑まで行ってきました。
そのため今回の記事は、長編小説「細雪」と同じく長編となり、「前編」・「後編」に分けてレポートします。

桜の季節は終わりましたが、ぜひ「細雪」のマキオカ姉妹と共にお花見をしたイメージで、記事をお読みいただけると嬉しいです。
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物語では、次女・幸子、幸子の婿養子の貞之助、小学生になる娘の悦子、三女・雪子、四女・妙子の5人で京都へ訪れている。

さあ、一緒に花見を始めましょう。

広沢池の桜

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マキオカ御一行は、花見をまず広沢池から始める。

広沢池(ひろさわのいけ)は、嵯峨野エリアにある月見の名所として有名な人工池で、遍照寺の創建に伴って作られたと言われている。
広沢池の南堤周辺に桜が咲いており、嵯峨の山々と池を背景にして花見を楽しめる。
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マキオカ御一行は、池のほとりにある水面に枝をさしかけた一本の桜の樹の下で、遍照寺山を背景に写真を撮っている。

幸子の婿養子の貞之助が、幸子・悦子・雪子・妙子の順に並んだ姿を持参したライカに収めている。
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マキオカ御一行には、この広沢池で一つの想い出がある。

ある年の春にこの池のほとりにいると、写真機を持った見知らぬ紳士が「ぜひ写真を撮らせてください」と懇願して、数枚写真を撮ってもらった。
紳士は後日、その時の写真を送ってくれたのだが、その中の一枚に幸子と悦子が水面に見入っている後姿の写真があった。

その写真がとても素敵な仕上がりだったので、それから毎年この池のほとりで水面を見つめ、写真に収めることも忘れずにするというシーンがある。
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広沢池の道路沿いに、大きな椿の樹がある。
この椿も「細雪」の中に登場する。

幸子はこの深紅の椿のある場所を覚えていて、毎年必ずこの垣根に立ち寄ることを忘れない。
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とても見事な椿の樹で、目が覚めるような色をした椿が咲いている。
樹齢約300年にもなるそうだ。

ぜひ広沢池に訪れた際には、この椿の樹も見にいくことをオススメしたい。
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大覚寺、大沢池の桜

広沢池を後にして、一行は大覚寺にある大沢池へ向かっている。
広沢池から徒歩20分ほどしたところにある。
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大覚寺は弘法大師・空海を宗祖と仰ぐ、真言宗大覚寺派の本山。
別名、嵯峨御所。

大覚寺にある大沢池は日本最古の庭池で、嵯峨天皇が唐(中国)の洞庭湖を模して造らせたことから、庭湖とも呼ばれている。
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マキオカ御一行は、大沢池の堤の上へも上がり、桜を楽しんでいる。
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大沢池の桜は本当に圧巻でした。
モリモリと桜が湧いているように咲いており、永遠にここの桜を見続けていたいと思いました。
そして、どこぞの桜の名所と違って観光客で溢れかえっておらず、日本の春の風情が感じられました。
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清凉寺、天竜寺を通って渡月橋へ

大覚寺、大沢池の桜を楽しんだマキオカ御一行は、清凉寺、天龍寺の門の前を通り、渡月橋の袂へ。
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嵯峨野エリアにある清凉寺は、「源氏物語」の光源氏が造った「嵯峨の御堂」に目される寺院。
嵯峨釈迦堂と呼ばれており、お釈迦様をご本尊としています。
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マキオカ御一行は清凉寺のあと、嵐山のメイン通りを歩き、天龍寺の門の前を通って渡月橋へ
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嵐山のメイン通り。
桜の季節なだけあって、いつにも増してすごい人の数でした。

マキオカ姉妹も現代の嵐山を訪れたら、当時との違いにビックリすることでしょう。
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渡月橋の袂へ到着。
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大堰川にかかる渡月橋。
マキオカ御一行は渡月橋を渡り、法輪寺へ向かいます。
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法輪寺の桜

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渡月橋を渡ってまっすぐ行くと、十三詣りで有名な虚空蔵菩薩のある法輪寺があります。

嵐山の中腹にある法輪寺の山で、マキオカ御一行は昼食の弁当の折詰を食べている。
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法輪寺は和銅6年(713年)に元明天皇の勅願により行基が創建したのが始まりで、長い歴史のある寺院です。
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桜越しに渡月橋が一望できる。
マキオカ姉妹もこの景色を眺めたのであろうか。
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法輪寺の舞台からは渡月橋や嵯峨野が一望できる。
大文字の送り火もバッチシ見ることができるスポットで、一般開放されます。

竹林の小径、厭離庵へ

法輪寺の山で昼食の弁当を食べたマキオカ御一行は、再び渡月橋を渡り竹林の小径へと足を進めます。
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天龍寺の北の竹林の小径を通るマキオカ御一行。

「悦ちゃん、スズメのお宿よ」と言いながら野々宮のほうへ歩いて行く。
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そしてマキオカ御一行は、嵯峨野にある厭離庵(えんりあん)の庵室へ訪れている。

厭離庵は臨済宗天龍寺派の寺院(尼寺)で、ご本尊は如意輪観音である。
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小説では厭離庵の入口のところにある桜が風が吹いたため、マキオカ姉妹たちの着物の袂におびただしく散ったと綴られている。

今回、訪れてみたところ厭離庵は閉まっていました。
現在、厭離庵は秋の紅葉シーズンに限り一般公開されているそうでう。
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マキオカ御一行は、それから再度清凉寺の門前に出て、釈迦堂前から愛宕電車に乗って、みたび渡月橋の北詰まで行きます。

愛宕電車とは昭和4年~昭和19年まで、嵐山から清滝までを走っていた鉄道のことです。
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渡月橋北詰に着いたマキオカ姉妹達は、一休みした後、タクシーを拾って平安神宮へ向かいます。

マキオカ姉妹にとって、京都での花見の頂点であり、一年にわたって毎年待ちわびている桜。
それが平安神宮の神苑にある桜です。

マキオカ御一行は、花見のクライマックスを毎年平安神宮の神苑としています。



さて、平安神宮の桜については【後編】でレポートしたいと思います。
乞うご期待。
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