2024年8月17日 更新

いざ参らん、一の谷の戦いへ! 京都市立芸術大学で「源平合戦図屛風」の企画展が開催

京都市立芸術大学内にある「アートスペースk.kaneshiro」で、⾦城 ⼀守氏所蔵の「源平合戦図屛風」の企画展が開催されています。無料でこれほどの貴重な芸術品を拝見できる機会は滅多にないので、その様子をご報告いたします。

いざ参らん、一の谷の戦いへ!「源平合戦図屛風」

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「源平合戦図屛風」は 六曲一双の大屏風で、右隻には「生田」と「一の谷」の戦いが、そして左隻には「屋島」の戦いなど、いずれも源平合戦で有名な戦いの名場面が描かれています。
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今回はそんな源平合戦を一望できる大屏風の内、右隻の展示がされています。
二つの「隻(屏風)」で「双」を成す屏風の内、右隻の六曲だけでこの豪華絢爛さと密度です。
左隻の展示も待ち遠しいですが、二隻が揃い、源平合戦を一望する景色を是非見てみたいと興奮してしまいます。

源平合戦の名シーンを一望

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この一部分だけでも「源義経が一の谷に奇襲をかけるため、深谷を進軍する様子(上部)」「梶原景時の二度駆け(中央右)」「平家館での軍議と安徳天皇(中央左)」など、名場面が濃縮して収められています。
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闘いの激しさもありありと描かれ、怒声や馬のいななき、鎧兜がぶつかり合う音が聴こえてくるかのようです。
武士たちの武具も精巧に描かれ、歴史資料としても非常に価値の高い芸術品です。
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こちらでは「浜戦」「盛俊の最後」「忠度の最後」「重衡の最後」「落足(師盛の最後)」「敦盛の最後」など、次々と平家一門が討ち取られていく様子が描かれています。
一人の人物たりとも流し見して疎かにできない劇的な場面の連続です。
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そして戦いに敗れ、海上に逃れる平家一門の敗走の様子です。
本屏風(隻)のストーリーを追って六曲を辿る最後の場面からは、源平合戦の「前編」を締め括る悲壮感が満ち溢れています。
この後、平家は西へ西へと敗走を重ね、ついに壇之浦で滅亡してしまいます。
その様子が描かれた左隻の展示が待ち遠しいです。

学生が分析した解説パネルが秀逸

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今回の「源平合戦図屛風」はどこを切り取っても名場面の連続で、一瞬たりとも疎かにできません。
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逆に言うと解説がないと情報に圧倒されてしまう程なのですが、そんな時は学生メンバーが作品分析を行い、詳細な解説パネルを作成してくれているので、リーフレットと併せてこちらを参照するのがおすすめです。
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各場面の名称と描かれている情景の解説が細かく説明されていて、とてもわかりやすいです。
こうして理解が深まると、より楽しく鑑賞することができます。
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また、「源平合戦図屛風」もさることながら、一段と目を引くのが同大学の大学院日本画専攻の学生による部分模写の展示です。
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作品に感じ入り、その思いが模写にあらわれています。
新しいのに歴史文化を感じる一つの芸術作品として、大いに鑑賞させていただけました。

アートスペースk.kaneshiro

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「アートスペースk.kaneshiro」は、京都駅エリアに移転した京都市立芸術大学のC棟6階にある展観ギャラリーで、⾦城 ⼀守氏のコレクションを活用し、学生と共に展示を構成して美術・工芸・歴史資料を紹介しています。
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⾦城 ⼀守氏は「100年住宅のゼロホーム」のCMで有名な「株式会社ゼロ・コーポレーション」の前身会社の創業者で、今回の京都市立芸術大学の移転の際、並々ならぬ尽力を寄せられ、その御厚志に敬意を表して「アートスペースk.kaneshiro」が誕生したそうです。

氏は所有する数百点の美術品を「他人にはガラクタ同然」と仰っているようですが、どのような貴重な品をご披露いただけるのかとても楽しみです。

幸い一般の方でも無料で見学させていただけるとのことなので、今回の「源平合戦図屛風」の企画展はもちろん、以後の「アートスペースk.kaneshiro」の企画展にも足を運んでみてはいかがでしょうか?

基本情報

<源平合戦図屛風ー其の壱 いざ参らん、一の谷の戦いへ!>
 ◇会期
  ・2024年6月15日(土)~11月17日(日)
   開館時間 9:00~18:00
 ◇会場
  ・京都市立芸術大学 C棟6階アートスペースk.kaneshiro
 ◇入館料
  ・無料

アクセス

<京都市立芸術大学>
 ◇所在地
  〒600-8601 京都市下京区下之町57-1
 ◇電車
  JR/地下鉄烏丸線/近鉄京都線:京都駅より徒歩5分
  京阪:七条駅より徒歩10分
 ◇バス
  市バス:塩小路高倉・京都市立芸術大学前より下車すぐ
 ◇車
  ※駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。
 ◇問い合わせ
  京都市立芸術大学附属施設事務室
  電話:075-585-2008
  FAX:075-585-2018
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