2019年4月30日 更新

【平安神宮】文豪、谷崎潤一郎の「細雪」でマキオカ姉妹が愛した京都の桜スポットを行く《後編》

日本を代表する文豪の一人、谷崎潤一郎の傑作長編小説【細雪】。物語の中の京都でのお花見のシーンが有名です。 前回に引き続き、筆ペン画家・最先端星人が、マキオカ姉妹が歩いた京都の桜スポットをレポートします。

谷崎潤一郎の長編小説【細雪】の京都桜めぐり後編

前回の記事〖【聖地巡礼】文豪、谷崎潤一郎の「細雪」でマキオカ姉妹が愛した京都の桜スポットを行く《前編》〗で、マキオカ姉妹達が京都の嵐山・嵯峨野へ花見へ行った行程を、そっくりそのまま歩いてきたわけです。
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今回の《後編》では、マキオカ御一行の京都お花見ツアーの大団円となる平安神宮・神苑の桜をレポートします。

小説の中でマキオカ御一行は朝から、広沢池や大沢池、大覚寺、清凉寺、法輪寺、厭離庵などでお花見を精力的に楽しんできました。

最後に一日の締めくくりとして、毎年どの桜よりも楽しみにしている、平安神宮・神苑の紅枝垂れ桜を観に行きます。

平安神宮・神苑の桜

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京都の岡崎・東山エリアにある平安神宮は、明治28年に平安遷都1100年を記念して、第50代桓武天皇をご祭神として創建されました。
皇紀2600年にあたる昭和15年には、平安京有終の天皇で第121代孝明天皇のご神霊も合わせて祀られています。
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平安京の正庁を模している朱塗りのご社殿。
平安時代を体感できる場所だ。
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安神宮神苑はご社殿を囲むようにあり、約10000坪の広大な池泉回遊式庭園。
ご社殿向かって左側に神苑の入口があります。
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小説の中で、この神苑の入口を入ったところにある紅枝垂れ桜を見ることが、マキオカ姉妹のお花見の最大の楽しみであることが綴られています。

神苑に入るまでは「今年はどんなふうか?」「もう遅くはないか?」などと気を揉みながら、入口の目の前にある満開の紅枝垂れ桜を目にした時、マキオカ姉妹は『あーーーっ!!』と歓喜の声を上げています。

この一瞬の喜びこそが花見行事の頂点で、去年の春が暮れて以来ずっと一年に渡って待ち続けていた、マキオカ姉妹のお楽しみなのです。
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マキオカ姉妹が感歎の声をあげる、神苑入ってすぐにある紅枝垂れ桜。
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『文豪谷崎潤一郎の小説「細雪」にも登場し、京都の春を象徴する桜として、神苑の数ある桜の中でも特に人気がある。』と記されています。
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谷崎潤一郎が小説の中で「紅の雲を仰ぎ見る」と表現していますが、まさにその通り。
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まるで天から桜が降りかかってくるかのよう。
右も左も上も後ろも、すべてが桜色。

まるで桜色の霞の中にいるかのような錯覚になります。
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【細雪】ではお花見のくだりだけでなく、夏の蛍狩りのシーンもとても美しい。
日本の四季折々の美しさを感じられる小説だ。

楓、樫、馬酔木(あせび)

小説の中で、神苑の桜樹がつきた辺りに、まだ柔らかい芽を出したばかりの楓や樫、円く刈り込んだ馬酔木(あせび)があると描写されているが、本当にその通りあった。
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楓

 樫

馬酔木(あせび)

馬酔木(あせび)

ぜひ神苑を訪れた際には探してみてください。
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レポートの途中ですが語らせてください。

ボクは【細雪】が谷崎作品で初めて読んだ小説でした。

船場にある旧家の薪岡四姉妹の上品な魅力、その中にある人間らしさ、そして四季の移ろいゆく儚さと美しさを感じながら読みました。

だからこそ最後の結末を読んだ時に、あっけに取られたことを記憶しています。
「なぜこんな締めくくり方なんや」と。

でもその後、他の谷崎作品の【痴人の愛】【卍】【少年】【秘密】などを読み、考えが変わりました。

「【細雪】の結末、めっちゃ谷崎潤一郎らしいやん」と。
文豪と呼ばれている人たちの小説では、とても読みづらい作品も多いです。
でも、谷崎作品は現代人でもサラサラと読み進められることも素晴らしいと思います。

白虎池、蒼龍池、臥龍橋

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西神苑にある白虎池。

小説では白虎池の菖蒲の生えた汀をマキオカ姉妹が歩くシーンがあります。
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中神苑にある蒼龍池と臥龍橋(がりゅうきょう)。
臥龍橋は豊臣秀吉によって造営された、三条大橋と五条大橋の橋脚が用いられているそうだ。

小説の中で、マキオカ姉妹とその娘がこの臥龍橋の石の上を渡るところや、水面に影を落として歩いているところを、貞之助が後を追いながら持参したライカに収める様子が綴られている。
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その後、マキオカ御一行は楼閣の橋の欄干から鯉に麩を投げてやったりしている。
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幸子の娘、悦子が「あ、お母ちゃん、お嫁さんやわ」と突然声をあげるシーンがある。
神前結婚を済ました白い角かくしと煌びやかな打掛姿の花嫁が、車に乗るところを見るのである。

神苑の出口近くに結婚式の入口があるので、この辺りであろうか?
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平安神宮・神苑の桜を見て巡り、マキオカ御一行の京のお花見は終了します。

マキオカ姉妹は神苑の桜を見て、「ああ、これでよかった。これで今年も花の満開に行き合わせた。」とほっとし、そして来年の春もここの桜を見られるようにと願います。

【細雪】を読んだことがある方や、好きな方は、桜の季節が訪れたらぜひ【細雪】のお花見スポットを巡りながら、マキオカ姉妹に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

おまけ

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【細雪】の中でマキオカ御一行は、京都へお花見に訪れた日の晩に、南禅寺近くにある瓢亭で早めの夜食をしたためる。

その瓢亭の茶座席で小学生の悦子が、まだ箸の持ち方が子供独特の変な持ち方をするため、八寸に乗っていたクワイを挟もうとして、箸の間からクワイが転げ落ちるシーンがある。

クワイが庭を転げて、青苔の上をコロコロ走って行くのを皆で大笑いする。
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こちらが小説に出てくる京都の老舗料亭、瓢亭・本店。
京料理、懐石が楽しめる。

平安神宮からも近いので、お財布に余裕のある方はぜひ。
京都には谷崎潤一郎のお墓があるそうです。
谷崎ファンはぜひお参りに行ってみてはいかがでしょうか?

平安神宮 詳細情報

◆住所/京都市左京区岡崎西天王町97

◆TEL/075-761-0221

◆HP/ http://www.heianjingu.or.jp

◆駐車場/なし

※境内参拝時間、神苑拝観受付時間は季節によって変わりますので、公式HPにてご確認ください。
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